JR-100のビデオ出力のカラーNTSC化(1) 設計方針とコンパレータ比較

レトロPC

JR-100が出力するビデオ出力は同期信号の波形や信号レベルがNTSC規格から大きく外れており、ビデオキャプチャ装置での取り込みができませんでした。前回は水平・垂直同信号を規格になるべく合うように変換・生成するように対策し、結果としてモノクロNTSC規格にほぼ準拠するレベルになりました。しかしそれでも取り込みできず。そこで今回は、取り込みできない原因がカラーバースト信号が入っていないことであるという予想のもと、対応を検討していきたいと思います。

さて今回もPICマイコンを使って対応しようと思います。ただし3.579545MHzのカラーバースト信号を生成するためには、せめて1波長で3サンプルは出力したいです。1サンプルの出力に4命令サイクルかけられるとすると、3.579545×3サンプル×4サイクル=42.95454MIPSくらいの性能をもつPICである必要があります。そこで今回は、最高速度が40MIPSのdsPIC33Fシリーズを使うことにします。若干オーバークロックしてしまいますが、7%くらいのオーバーなら耐えてくれると信じて……。もしだめならCPLD/FPGAの採用を検討します。どうなることか。

まずはシステムの構成を考えてみました。こんな感じでいけるかなぁ?入力信号を映像信号と同期信号に分け、同期信号をトリガとしてJR-100の出力では欠けている垂直同期信号を生成し、さらに今回はカラーバースト信号も生成する、という方針で考えていきます。また前回は水平同期と映像信号の出力のタイミングにゆらぎが発生したので、今回は映像信号の出力も水平同期信号にリンクさせ、水平方向に画面がブレる現象も解消しようと思います。また、図の青い四角は専用のICや部品を使い、オレンジ色の部分をPICで処理する、ということを意味します。

コンパレータによる映像分離

さっそく回路の構成に入っていきます。とりあえずはコンパレータを使ってビデオ出力から映像信号を取り出すところを作ってみます。JR-100の映像信号のドットクロックは7.15909MHz(→参考記事)なので、この信号変化に追随できる高速なコンパレータが必要です。今回は以下の2種類を候補とします。

  1. NJM360D (応答速度 20ns、±5V二電源、TTL出力)
  2. NJM319D (応答速度 80ns、+5V単電源、オープンコレクタ出力)

7.15909MHzということは1ドット分の時間が1/7.15909MHz=約140nsですから、応答時間はこれより短くなければなりません。2種類を候補としたのは実は後付けの理由で、最初NJM360Dを買ってから二電源必要なことに気づき、電源回路が複雑になるのを避けるために急きょNJM319Dも入手したことによります……。

DC/DCコンバーターと3端子レギュレータを使って、コンパレータ用(と次に実験する同期分離IC用)の±5VとPIC用の3.3Vを出力する電源回路を作ります。DC/DCコンバーターでせっかく入出力を絶縁したのに、3端子レギュレータ出力を介してグラウンドが接続してしまうのが気にならないではないですが(この辺勉強不足でどうするのが正しいのか分かりません)、とりあえずこのままいきます。

電源回路

以下、それぞれのICにJR-100のビデオ出力を入力した結果をそれぞれ記します。なおコンパレータのリファレンス電圧は1kΩと3kΩの抵抗で分圧して1.25Vとします。また画面一面に市松模様の文字を表示した状態で計測しました。つまり映像信号上はHighとLowが1ビット単位で交互に並ぶ波形になります。

NJM319Dの場合

HからLへの変化に比べ、LからHへの変化は少しゆっくりとした立ち上がりになっています。また、出力電圧がVdd(=5V)に上がりきる前に立下りが始まってしまっているため、応答速度が追い付いていないように見えます。ただしオシロのプローブに起因するアンダーシュートが出ている可能性があり、0V以下の電圧まで触れている部分は0Vとみなしてもいいような気がします。

この出力をしきい値0.2Vdd(1.0V)、0.7Vdd(3.5V)でLとHに判定すると、Lの期間は76ns、Hの期間は36nsとなります。命令サイクルが約43MIPSだと1命令当たり23nsの時間が必要なので、映像信号をサンプリングするタイミングを相当厳密に合わせないと、特にHの信号を取りこぼす可能性がありそうです。

NJM360Dの場合(反転出力6pinの信号)

こちらは変化の仕方がだいぶ急峻になりました。H期間が146ns、L期間が98nsとだいぶ余裕があります(それでもL期間は4命令分の幅しかありませんが)。これなら何とかなりそうです。

まとめ

以上の結果から、映像信号を取り出すためのコンパレータはNJM360Dを使うことにします。電源回路が複雑になってしまうので、NJM360DでうまくいったらNJM319Dによる単電源化を模索してみようと思います。

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